東京都 「 ウイルスが また 広がってきたので 気をつけて 」
国の 緊急事態宣言が 終わってから 東京都は 少しずつ 休んでいた店などの 営業が できるように しています。 6月1日からは デパートや 映画館も 開けることが できるように なりました。
引用:NHK「NEWS WEB EASY」
みなさんは、上の文章を見てどう感じましたか?
「なんかニュースにしては不自然」「やたらルビがふってある」「小学生向けのニュース」
色々と感じることがあったと思います。
実はこのニュース、「やさしい日本語」というものを使って書かれています。
(NHKのやさしい日本語ニュースサイト「NEWS WEB EASY」)
「やさしい日本語」は、日本に定住する外国人のために分かりやすく作られた日本語のことです。
1999年に作られたこの「やさしい日本語」、じつは近年再び注目を浴びているんです。
この記事では、
- 「やさしい日本語」とは何か
- 「やさしい日本語」が作られた目的・背景
- 「やさしい日本語」のメリット
- 「やさしい日本語」の作り方
について解説していきます。
日本語教師を目指している方にも、「やさしい日本語」は頻出のキーワードですので、ぜひご覧ください!
日本に住む外国人のことが知りたい方はこちらの記事もどうぞ。
「やさしい日本語」が作られた背景とメリット
「やさしい日本語」は、日本に住む外国人のために分かりやすく作られた日本語のことです。
文の構成や使われている語彙を簡単にし、ルビをふるなどすることで、日本語が不自由な外国人でも読めるようにしています。
きっかけは阪神・淡路大震災
1995年に兵庫や大阪を襲った阪神・淡路大震災。
多くの犠牲者を出したこの災害で、ある問題が浮き彫りになりました。
それは災害時の外国人に対するサポート体制の欠如です。
もともと兵庫や大阪は外国人が多く居住する地域でした。
一刻も早く安全な場所への避難を呼びかけなければならない状況で、翻訳や通訳のための人出や時間の確保がむずかしく、外国人に対して十分な情報提供が出来なかったために多くの犠牲者を出してしまいました。
この阪神・淡路大震災がきっかけとなり、日本に住む外国人への「やさしい日本語」で情報提供の方法が始まりました。(テストに出ます!)
なぜ英語ではなく日本語か
もともと非常時を想定して作られた「やさしい日本語」でしたが、近年の在留外国人の増加により、普段の生活においてもその重要性が認識され始めています。
現在、日本に定住する在留外国人の数は、約283万人(2019年6月末現在)、彼らの国籍・地域は190以上にも及びます。
さらに2016年に国立国語研究所の調査によると、
定住外国人が「理解できる言語」と答えた割合は、「日本語」は62.6%、「英語」は44%であった
国立国語研究所(2016)
という結果が示されました。
外国人が日本で必要な情報を得ることができるように配慮する必要がある一方で、彼らの母語全てに対応するのは困難です。
そこで彼らが比較的理解できる「日本語」を簡単にした「やさしい日本語」が再び注目を浴びているのです。
翻訳しやすいというメリットも
さらに、「やさしい日本語」に直した文章を翻訳アプリなどに入力し、多言語への変換を行うと、普通の日本語よりも正確に翻訳されるというメリットがあります。
これは、日本語のレベルが低い外国人定住者だけでなく、日本語が全く話せない旅行客の人たちにとっても大変大きな助けになります。
これにより最近では、観光地でも外国人向けの案内などに「やさしい日本語」が導入され始めています。
やさしい日本語の作り方
もともと「やさしい日本語」は、1999年に弘前大学の佐藤和之教授の研究グループが開発したもので、
小学校3年生程度の日本語文法で理解できる程度の簡潔な日本語で災害や避難を伝える防災マニュアルとして作られました。
「やさしい日本語」作成の基本ルール
やさしい日本語の作成ルールは次の通りです。(テストに出ます!)
- 簡単な語彙・文の構造を使い、1文は短く
- 外来語の使用には注意する
- 擬態語、あいまいな表現、二重否定の使用は避ける
- 動詞を名詞化した表現はなるべく使わない
- 文末表現はなるべく統一する
以下でもう少し補足します。
ルール1 簡単な語彙・文の構造を使い、1文は短く
まず、難しい言葉の使用は避け、簡単な語彙を使用するようにしましょう。
ここでいう簡単な語彙とは、外国人が受ける日本語能力検定N4〜5レベルで出題される語彙を指します。
ちなみにN4〜5レベルとは、日本語能力試験で最も基礎のレベルである2つです。
人と待ち合わせ(時間や場所を決めるなど)が出来たり、自分の欲しいものを相手に伝えて買い物が出来たりするレベルと言われています。
また、1文の長さは24拍程度にし、長くても30拍を超えないようにしましょう。
文節の数は10程度を目安に作ってください。
ちなみに「バナナ」は3拍で、
「わたしは バナナを たべます。」は3分節です。
各文節の後ろに「ネ」を付けると分かりやすいですよ!
例:「わたしはネ バナナをネ たべます。」
ルール2 外来語の使用には注意
外来語には、元々の語源と発音や意味が異なるものが多いので使用する際は十分に注意しましょう。
例:
トンネル(発音が違う)
アルバイト(英語の語源ではない)
デマ(英語にはない表現)
ルール3 擬態語、あいまいな表現、二重否定の使用は避ける
「にやにや」や「うろうろ」などの擬態語は、日本語を母語としない外国人には伝わらない可能性が高いため、使わないようにしましょう。
「おそらく」や「たぶん」、「かもしれない」などのあいまいな表現の使用は、とくに災害時などの緊急性が高い情報伝達には使用しないようにした方がいいです。
また、「通れないことはない」や「使えないわけではない」などの二重否定表現は、私たち日本語母語話者でもややこしいので、使わないようにしましょう。
ルール4 動詞を名詞化した表現はなるべく使わない
動詞を名詞化した表現とは、「揺れがあった」などのように「揺れ」という名詞に「あった」という動詞をくっつけたような表現のことです。
この場合は「揺れがあった→揺れた」と直すようにしましょう。
ルール5 文末表現はなるべく統一
とくに以下の表現はN4〜5の日本語学習者は習っていない表現である可能性があります。次のように直しましょう。
①可能 「〜れる、〜られる→〜することができます」
②指示 「〜しましょう→〜してください」
さらに「やさしい日本語」にするためのテクニック
以上のルールに沿って作っても十分に「やさしい」ですが、次のテクニックを使うとさらに「やさしい日本語」にすることができます。(こちらもテスト頻出!)
文節の間にスペースを入れる
文節と分節の間は、スペース(空白)を入れるようにすると、外国人の方にとってさらに理解しやすくなります。
例:「下の ハガキに 書いて ください。」
漢字を多用せず、ふりがなをふる
漢字は必要最低限の使用にとどめ、使用した漢字にはふりがな(ルビ)を付けるようにしてください。
ふりがなは、漢字の上や下につける他、漢字の後ろにかっこ書きでつけるのもよいですね。
例:「下の ハガキに 書いて ください。」
「下(した)の ハガキに 書(か)いて ください。」
実際に「やさしい日本語」を作ってみよう
それでは、実際に「やさしい日本語」を作ってみましょう!
と言われてもなかなか難しいですよね。。
そこで、次で紹介するツールを利用することで簡単に「やさしい日本語」を使った文章を作ることが出来るので、ぜひ試してみてください。
文章を入力するだけで一発変換「伝えるウェブ」
「伝えるウェブ」というサイトは、「やさしい日本語」に変換したい文章をサイト上に入力し、変換ボタンを押すだけで変換してくれる便利なサイトです。
文章だけでなく、URLを入力すると、Webページ全体を変換してくれる機能もありますよ。
実際に試してみました。
どうでしょうか?「拡大し」が「ひろげました」だと少し違和感がある気はします。多少手直しは必要かもしれませんが、外国人にしてみれば、変換後の方が分かりやすくなっているのかもしれませんね。
作った文章のレベルを判別!「リーディング チュウ太」
「やさしい日本語」に変換した文章が、どのくらいの日本語のレベルがあれば理解できるかを知りたいときは、「リーディング チュウ太」というサイトがおすすめです。
「やさしい日本語」で作った文章を入力するだけで、そこで使われている語彙などが、日本語能力試験のどのレベルに相当するかを表示してくれます。
実際に使ってみました。
右に一つ一つの語彙が、日本語能力試験のN1~N5のどのレベル相当かが表示され、下にはこの文章の評価が★の数で表示されます。
※2020年7月28日現在、整備中で使用できなくなっているようです。
さいごに
いかがだったでしょうか?
今回は、「やさしい日本語」について解説しました。
グローバル化が進む現代において、海外からの外国人労働者や留学生、観光客など、多くの外国人が日本を訪れるようになりました。
彼らは理由は色々あるにしろ、日本に来たいと思って日本を選んでやってきてくれました。
私たちは、そんな彼らを「おもてなし」という文化で迎えるのであれば、気持ちというソフトだけでなく、施設や案内などのハードな部分をもっと整備する必要があると思います。
この「やさしい日本語」が日本の皆さんに認知・理解されることで、その解決策の一つになり、この先広がっていくのかもしれません。