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肥満が途上国で問題となっている理由【もはや飢餓だけじゃない】

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この記事は、次のような悩み・疑問を解決します。

  • 世界の肥満の現状が変わっているって本当?
  • 途上国で肥満が問題となっている本当の理由を知りたい

こんにちは、イタガキ(@gakisan2)です!

世界の解決すべき問題の一つに「飢餓」がありますが、実は今「肥満」も新たな問題になっていることをご存じでしたか。

もしあなたが「肥満」という言葉を聞いて、「先進国と言われる国や裕福な人だけが抱える贅沢病」というイメージしか持っていないとすれば、この記事を読んで情報のアップデートをすることをおすすめします。

とくに私がサモアという国に住み、実際に見聞きした経験も交えながら、途上国でなぜ肥満が問題となっているのかを解説していきます。

この記事では、以下の事柄について解説します。

  • 世界の肥満の現状
  • サモアで見た肥満を引き起こす本当の原因
  • 世界の途上国に広がる肥満の問題

世界の肥満の現状

はじめに、肥満の定義、そして世界の肥満の現状について紹介します。

世界の「肥満」の定義であるBMI

肥満を医学的に判断する基準の一つにBMI(Body Mass Index: 体格指数)というものがあります。

BMIは〔体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)〕で簡単に計算することができます。

例えば、身長が170cm、体重70kgの場合、〔70 ÷ 1.7 ÷ 1.7 = 24.2〕となります。

このBMIの値を基に、世界保健機構(WHO)が示している肥満の基準は、以下の通りです。

18.5未満  低体重 (Under weight)  
18.5~25.0 普通体重(Nomal range)
25.0~30.0 過体重 (Pre-obese)
30.0~35.0 肥満1級(Obese classⅠ)
35.0~40.0 肥満2級(Obese classⅡ)
40.0以上  肥満3級(Obese classⅢ)

欧米などの国々の多くはこの基準に従って肥満を定義していますが、国や地域によってやや解釈が変わることもあります。

例えば、日本人はBMIが25を超えると2型糖尿病や循環器疾患のリスクが高くなる傾向があることが分かっているため、日本では肥満を「BMI 25以上」と定めています。

肥満というと、長らく豊かな国の問題と思われていましたが、最新の調査結果を見るとどうやらそうではないことが分かってきました。

世界の肥満率ランキング

アメリカ合衆国中央情報局(CIA)が2016年に調査した世界各国の人口あたりの成人肥満率ランキングによると、上位10カ国は以下の通りでした。

人口あたりの成人肥満率(BMI値が30以上)

第1位  ナウル     (61.0%)
第2位  クック諸島   (55.9%)
第3位  パラオ     (55.3%)
第4位  マーシャル諸島 (52.9%)
第5位  ツバル     (51.6%)
第6位  ニウエ     (50.0%)
第7位  トンガ     (48.2%)
第8位  サモア     (47.3%)
第9位  キリバス    (46.0%)
第10位 ミクロネシア連邦(45.8%)

第189位 日本      (4.3%)

出典:CIA「The World Factbook」( 2016)

ワースト10は全て開発途上国

上の図の通り、肥満国ランキングのワースト10は全て開発途上国と呼ばれている国々です(世界銀行,2021)。

そして、さらに驚くべきことに、これらの国々はすべて太平洋島嶼国なのです。

正確には、太平洋島嶼国の中でも、ポリネシア、ミクロネシア地域と呼ばれる国々です。

そして、2人に1人が肥満という結果にも驚かされます。

ここまで偏った結果になっているとは、正直私もこのデータを見るまで想像していませんでした。

肥満大国と言えば、私はアメリカがぱっと頭に浮かびましたが、アメリカは惜しくも(?)第12位(36.2%)でした。(と言っても先進国と呼ばれる国では断トツの上位!)

日本はご覧の通り第189位とかなり下の方です。

肥満が健康に与える影響

肥満が問題である一番の理由は言わずもがな、健康のリスクです。

肥満が大きく影響を与える生活習慣病には、糖尿病、高血圧、痛風、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などがあります。

この肥満の問題がいま、開発途上国と呼ばれる国でも問題となっているのです。

それでは、なぜ食料も経済も豊かではない開発途上国で肥満が問題となるのでしょうか。

太平洋島嶼国が抱える肥満問題3つの原因

肥満と聞くと、「自己責任」「自業自得」といった、肥満である本人に責任があるという意見もあるかも知れません。

たしかにそういった部分も全くないとは言えませんが、それでも私がサモアで実際にこの目で見た肥満の原因と思われるものは、開発途上国が抱える問題や太平洋島嶼国が抱える問題が大きく影響しているものでした。

輸入依存や食の欧米化による影響

肥満になる最も大きな原因はもちろん「食べ物」です。

したがって、食生活を改善するだけでも肥満は改善させることが出来ます。

しかし、この方法は食べ物を自分で選択できる環境にいる人だけができる解決法であることを覚えておかなくてはいけません。

太平洋島嶼国のほとんどの国は、食料の多くを他国からの輸入に頼っている現状があります。

なぜなら、限られた土地や人口で家畜や農作物を十分に生産することは難しいからです。

また、たとえ農作物を生産したとしても、国内で売るには市場が小さく、海外に輸出するには輸送費がかかるため、産業として成り立つレベルで農業を行うことはかなり難しいです。

輸入された食品は非常に高値で売られているため、貧困家庭が購入する食料品は、缶詰や即席麺、加工品やスナック菓子など、安価でカロリーが高い食品に偏ってしまいます。

結果として、栄養バランスが偏った食生活になり、肥満から抜け出すことが難しい状態に陥ってしまうのです。

サモアの食事
サモアのいかにも高カロリーな食事

ヘルスケアに対する圧倒的な知識・情報不足

健康や栄養など、ヘルスケアに関する人々の知識が不足していることも、2つ目の原因として挙げられます。

サモアは、太平洋島嶼国の中では比較的食料を自給自足することができている国ですが、他の大洋州の島国と同じように肥満が多いのは、こうした健康についての教育を受ける機会が圧倒的に少ないことがあります。

日本であれば小学校や中学校などの義務教育の理科や保健、家庭科の授業などで栄養や健康について学習する機会があるだけでなく、メディアなどから得られる情報も豊富で、保護者が持つ知識や情報も豊富なため、あらゆる場所で知識を得る機会があります。

一方で、開発途上国と呼ばれる国の多くは、そのような学習機会に乏しく、大人も正しい知識を身に付けておらず、なぜ肥満になるのか、肥満によってどのようなリスクがあるのか、どうすれば健康状態を保てるのかを知らないことが肥満を増長させている側面もあります。

教育や知識、情報の格差がその人の健康や寿命にも大きく影響を与えることを考えると、教育の重要性が改めて感じられますね。

遺伝子や価値観といった要因も

他にも、サモアの人々の肥満の原因が遺伝子にある可能性を示唆した研究があります。

この研究によると、「サモア人の肥満リスクを高めるCREBRF遺伝子のバリアントが見つかった。このバリアントは、エネルギー消費を減らしつつ、脂肪貯蔵を増やす、つまり倹約をもたらすと予測されており、過去の食料不足の時代にサモア人の役に立っていた可能性がある」とのこと(Nature「サモア人の肥満の一因となっている「倹約」遺伝子バリアント」)。

まだ研究は続いているようで真偽のほどは分かりませんが、ポリネシアの人々の太平洋を渡った先祖の生き残りであることを考えると、何となく信ぴょう性を感じてしまいます。

これ以外にも島嶼国の人が「ふくよかな」異性を好むことも影響しているかもしれません。

サモアの人に異性の好みを聞くと、ほとんどの方が痩せているよりもふくよかな方を好みます。サモア人の友人(男性)いわく、「痩せている女性は子どもとみなされ、異性の対象にならない。太ってこそ大人の女性であり、魅力的に見えるんだよ」とのこと。

こういったイケメン・美人の定義の違いも、肥満が多い原因なのかもしれません。

\太平洋島嶼国の問題についてもっと知りたい方はこちらどうぞ/

なぜ南の島の楽園に援助が必要か【太平洋島嶼国が抱える脆弱性】

今や肥満は途上国にとっても深刻な問題

WFP(世界食糧計画)によると、次のような事実が報告されています。

「5歳未満の3,800万人を超える子どもは体重過多で、成人も8人に1人、6億7,200万人を超える人々が肥満状態」

「肥満に悩む成人の割合はここ数年、上昇し続けています」
国連WFPブログ「肥満と飢餓の「深い関係」途上国が抱える二重の負担」

事実、この問題は今回紹介したサモアなどの太平洋島嶼国だけでなく、アフリカや中米でも問題となっています。

飢餓が栄養不良であるならば、肥満もまた栄養不良の状態と言えます。

そして、それが本人が望まない状態であるにもかかわらず、そのような状態に陥ってしまう環境にあり、自分たちの努力では解決できない問題である限り、私たちはその解決のために協力していくべきです。

そのためにも、私たちがまず出来ることは、問題を正しく認識し、常に情報のアップデートをしていくことではないでしょうか。

これからもこのブログでは、なかなかスポットが当たらない太平洋島嶼国の情報をお届けしていきたいと思います。誰も取り残さないために!

今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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板垣 暁歩

国際協力NGOルマナイサモア所属
サモアを愛する国際協力師
2020年7月よりサモアで算数・数学教育の新たなプロジェクトをスタート予定。「教育で人と世界をつなぐ」をモットーにサモアと日本の学校をつなぐプロジェクト進行中。ライターとして教育・国際協力の記事も執筆。

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