サモア

海外送金に依存するサモアの出稼ぎ労働者の現状と問題

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サモアの社会問題の一つに「海外への出稼ぎ労働者」があります。

国内の産業が乏しいサモアでは、近隣のオーストラリアやニュージーランドなどの先進国に出稼ぎに行き、お金を稼いでサモアの家族に送金をすることで養っているケースが大変多いです。

実は、これはサモアだけでなく、大洋州地域の国々に共通している状況であり、様々な問題を抱えているのです。

2020年6月5日付のサモアオブザーバーという現地新聞の記事にこのような記事が載っていました。

和訳すると、以下の通りです。

海外の有権者には、送金だけでなく投票権も

海外に住むサモア人がサモアに住む家族の日々の生活を支えているのであれば、彼らにも国の選挙に参加する機会が与えられるのは当然ではないだろうか。

出典:Samoa Observer

今回は、上の新聞記事の背景にあるサモア、そして大洋州の国が抱える問題についてお話していきます。

この記事では、

  • サモアの出稼ぎ事情
  • 出稼ぎの増加によってサモアが抱える問題
  • サモアの選挙権という新たな問題

について解説します。

サモアについてもっと知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。

サモアにおける出稼ぎ事情

サモアという国は、海外への出稼ぎによって成り立っている国だと言っても過言ではないかもしれません。

サモアの出稼ぎの現状

海外に出稼ぎに出ているサモア人の現状は、以下の通りです。

【人数】129,150人 (2013年、ILO
(ニュージーランド65,000人、アメリカ領サモア31,900人、オーストラリア20,000人弱、12,400人米国)

【送金額】 $503,730,000 tala(=約20億円) (2017-2018)

実際は、出稼ぎに行ったままその国で定住し、そこで結婚して子どもを産み、完全に生活の基盤を移しているケースもかなり多いです。

事実、ニュージーランドにはサモアにルーツを持つ人が144,138人(2013年)もいて、全人口の約3.6%にも上る最大移民グループになっています。

出稼ぎに対するサモア人の考え方

一方、サモア人はこの出稼ぎについて、どのように考えているのでしょうか。

私がこれまで出会ったサモア人は、そのほとんどが「出稼ぎで海外に住んでいる家族」を持っていました。

そして多くのサモア人が、海外に出稼ぎに行った家族のことを自慢げに話してくれます。

なぜなら、海外に出稼ぎに行ってちゃんとした仕事を持っていることは、その人が優秀であることの証だからです。

あるサモア人女性はこうも話していました。

サモア人が子どもをたくさん作るのは、1人でも優秀な子が育って、海外に出稼ぎに行ってもらい、家族を養ってもらいたいと思っているからだよ。

出稼ぎの増加でサモアが抱える問題

しかし、このサモア家族の家計を助けている出稼ぎによって生まれる問題もあります。

海外送金に依存するサモア

サモアは産業が乏しく、そのほとんどは観光業と農業です。

そのため、出稼ぎ労働者によるサモアへの海外送金は、GDP(国内総生産)の約18%(2018年,世界銀行)にも上ります。

つまり、国の収入が外国での労働に大きく依存しているこの状態は、決して健全で持続可能な経済とは言えないでしょう。

また、自国の産業の大部分も観光業に依存しているため、今回のようなコロナ禍などの世界情勢に大きな影響を受けてしまいます。

人材の国外への流出

出稼ぎ労働者のパターンとして、高校や大学に進学する時点で海外に行き、向こうの学校で学び、そのままその国で職を得るというケースが増えています。

したがって、サモア国内の優秀な人材が次々に国外に流出している現状があります。

中にはサモアに帰って来る者もいますが、帰って来てもその力量に見合った待遇や職種を見つけることはかなり困難であるため、

大半はそのまま国外で家族を作り、そのまま定住する傾向にあるようです。

経済的格差の拡大

家族から優秀な人材が育ち、国外に出て海外送金を受け取ることで、その家庭は再び別の子どもや孫を海外に送る資金を確保できるため、好循環が生まれる一方で、

そうではない家庭は、貧しい暮らしが続き、貧困の負のループに陥ってしまいます。

その結果、貧富の差が拡大するという問題も抱えています。

サモアの海外移住者に対する選挙権

さて、冒頭で紹介した記事の内容は、サモアの海外移住者に対する選挙権についてでした。

海外移住者の選挙権の現状

現在、出稼ぎ労働者として、または進学してそのまま定住しているサモア人に対する選挙権は与えられています。

しかし、その方法は「サモアに戻って来て投票をする」という選択肢のみです。

政府としては、サモア人とはいえ国外に住む者が国内の政治に影響を与えるようになることがリスクだと考えているようです。

事実、近隣先進国との結びつきは経済的にも年々かなり強固なものになっており、政治に対する他国の干渉を恐れているのかもしれません。

しかし、多くのサモア人が5年に一回の総選挙の際に帰国し、投票を行っている現状があります。

もちろん、そのためには決して少なくない渡航費がかかります。(ただそれを楽しみにしている人もいるとは思いますが)

サモア経済に多くの貢献をしている移住者の存在

この現状に疑問を投げかけたのが、初めに紹介した新聞記事を書いた記者でした。

記者の主張をまとめると、

  • サモア経済に多大な貢献している人々対して、非合理的な方法でしか選挙に参加する権利を与えていないのはおかしい
  • そもそも海外送金に頼ってしまう現状は、国内の雇用機会を創出できない政府の責任
  • 国外でも投票できる制度を作ってあげるのが、政府の責任ではないか

ということのようです。

サモア人の意見は

それに対して、サモア国内に住む一般市民の意見も取材していました。

以下、サモアに住むサモア国民の声です(記事からの抜粋)。

オペタさん(60代女性)
オペタさん(60代女性)

彼らは投票しにサモアに来るべきよ。私は、彼らに帰って来て投票して欲しいのよ。総選挙の時にはサモアに来て投票し、また戻ればいいんじゃない。

遠く離れる家族が帰って来るための口実を減らしたくない親心も垣間見えますね。

マティリさん(50代女性)
マティリさん(50代女性)

みんなより良​​い未来を求めて国を離れたんです。だからわざわざ戻って投票する必要はないわ。サモアに旅行できないんだったら、滞在している国からオンラインで投票できる時代じゃない。

今の時代に合った変化を政府にも望んでいる人もいるようです。

パトロさん(30代男性)
パトロさん(30代男性)

彼らはサモアで投票をすべきだよ。旅費が高いからここに来たくないサモア人がいることは知っているけど、それは彼らが決めたことだから。そもそもサモアのことは、サモアにいる私たちだけが決めればいいことだし。

中には、サモアに残ることへのプライドや、強い愛国心を持った人の意見もあるようですね。

次の総選挙は来年2021年。

この議論が、今後どのように進んでいくか引き続き注視していきたいと思います。

さいごに

いかがだったでしょうか?

サモアや大洋州の国々が抱える「出稼ぎ」問題について理解してもらえましたでしょうか?

とくに小さな島国における持続可能な開発の推進には、地理的・資源的な限界がある点は無視できません。

しかし、サモア人自身が皆で知恵を出し合い、解決していくことこそ大事になっていきます。

そのうえで、そういった人財を育てるための、「教育」が果たす役割は大きいと言えるのではないでしょうか。

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板垣 暁歩

国際協力NGOルマナイサモア所属
サモアを愛する国際協力師
2020年7月よりサモアで算数・数学教育の新たなプロジェクトをスタート予定。「教育で人と世界をつなぐ」をモットーにサモアと日本の学校をつなぐプロジェクト進行中。ライターとして教育・国際協力の記事も執筆。

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