日本語教師の需要が増えてるって聞くけど本当なの??
アニメが好きな人とか一部だけの需要とか、オリンピック効果で一時期だけなんじゃないの?
日本語を学ぶ人や日本語教師の需要が増えてるって話を最近よく聞きますよね?
テレビ番組なんか見ても、来日している外国人が日本好きをアピールしてるような番組が最近増えているように感じます。
ああいう番組を見ると、自分の生まれた国を好きだって言ってくれることは嬉しい反面、
性格の悪い私は、「これ本当?」「ヤラセでしょ?」「一部の日本マニアをキャスティングしてるだけっしょ」って思ってました。
しかし、日本語教育についての現状を調査した最新のデータを調べ、
また、留学生や研修生、技能実習生など、様々な国から日本に来た外国人の皆さんと話して分かった経験から
どうやら海外での日本語教育に対するニーズは本物だなと確信しました。
そう感じた理由は大きく分けて3つあります。
- 日本語を話せる=職をつかむチャンス
- 義務教育で日本語を学べる国の増加
- オープンリソースの増加によるニーズ拡大
以下で、詳しくお話していきます。
日本語教師についての過去の記事もよろしければどうぞ。
データから読み取る日本語教育の現状
まずは、データから日本語教育の現状を見ていきましょう。
(なお、以下のデータはすべて、独立行政法人国際交流基金が2018年5月~2019年3月までに行った「2018年度海外日本語教育機関調査結果(速報値)」からの引用です。)
学習者数の推移
2018年度の日本語学習者数は3,856,773人です。ただし、この調査では日本語を学ぶ教育機関に属している学習者を対象にしているため、独学でインターネットなどで学んでいる人は含まれません。したがって、潜在的な数も含めればもっと多いのではないかと思います。
(速報値)」
また、地域別に見るとやはりアジアがほとんどを占めていますが、大洋州(オセアニア)地域も人口比を考えると多くの学習者がいることが驚きでした。
教師数の推移
(速報値)」
日本語を指導する教員の数も学習者に応じて増加傾向にあります。ただ、単純に学習者数を教師数で割ると、約50人の学習者に対して1人の教師という比率。まだまだ教師の数が足りません。
(速報値)」
また、日本語教師が働いている場所別に見ると、「学校教育以外」の数が急増していることが分かります。学校教育以外の教育機関とは、民間の専門学校や日本語学校、企業などです。
教育機関数の推移
(速報値)」
教育機関数についても増加傾向が続いています。
(速報値)」
教育段階別では、中等教育(中学・高校)段階で日本語教育を取り入れている学校の割合が一番大きいです。中学や高校で外国語の選択科目として取り入れている国が多いようです。やはり教員数と同様に、学校教育以外の数も増えていますね。
日本語学習の目的・理由
最後に、学習者が日本語を学ぶ目的・理由についての調査です。
(速報値)」
50%以上の学習者が、「歴史・文学・芸術等への関心」「漫画・アニメ・J-POP・ファッション等への興味」「日本語そのものへの興味」と回答しているほか、「日本への観光旅行」を選ぶ人も前回の調査より急増しています。
日本語教育の需要が増えている背景
以上のデータを踏まえ、なぜ日本語教育の需要が増えているのかについて3つの理由に着目しました。
日本語を話せる=職をつかむチャンス
日本は現在、少子高齢化による深刻な労働力不足に陥っています。
一方、海外に目を向けると、途上国を中心に人口が増加傾向にあり、労働力が増えている一方で、経済や産業がまだ追いついておらず、国内に仕事がないという国が少なくありません。
よって、日本語が話せることは日本で仕事を見つけるチャンスにつながります。または、日本に留学して学位や修士をとることも、キャリアアップにつながります。
実際に、日本に来る留学生の数は急増しており、街のコンビニやラーメン屋さんで外国人がアルバイトをしている光景が珍しくありません。
また、海外に進出する日系企業も増えていることも要因の一つと言えるでしょう。
このグラフではアジアが中心ですが、昨年日本で行われたTICAD(アフリカ開発会議)では、アフリカへの民間企業の進出を推進していく意向を首相が宣言していました。
今後こういった企業が増えていく中で、アフリカでの日本語教育の需要も増加することが考えられます。
上のデータからもわかるように、アフリカの日本語教育機関は完全にブルーオーシャンです。ビジネスチャンスですよ!
義務教育で日本語を学べる
アジアを中心に、中学・高校で日本語を外国語の選択科目として導入している国が増えています。
これは上で述べた日系企業や日本留学へのニーズが教育にも影響を与えている証拠でしょう。
そして一度義務教育のカリキュラムに組み込まれれば、そう簡単には外れることはないでしょうから、今後もしばらくは需要が増加することが考えられます。
さらに上のデータでは、中等教育機関で教える日本語教師の人数が圧倒的に足りません。
しかも義務教育となると、当然現地の人で日本語を教えられる人材を育てなければなりません。
したがって、日本語を教える教員を指導する教育機関や講師の需要も増えていきそうですね。
オープンリソースの増加によるニーズ拡大
さらには、世界的に情報インフラの整備が急速に進み、スマホ片手にYoutubeやFBなどに誰でもアクセスできる時代になりました。
今後5Gの登場により、日本語教育もリモート化が進むことで、さらに日本語学習に対するニーズが高まっていくことが予想されます。
とくに、日本は漫画やアニメ、その他のPOPカルチャーなど、世界中の若者をくぎ付けにするキラーコンテンツを数多く抱えています。
昨年私がサモアに行った時も、子どもたちが家の中でみんなで集まってナルトやワンピースなどのアニメを日本語音声で楽しんでいました。
それと同時に、Youtubeなどで独学で日本語を無料で学べるようなオープンリソース教材もさらに増えていくことでしょう。
外国人向けの日本語学習チャンネルなんかも今後狙い目ではないでしょうか?
さいごに
今回は、実際のデータから日本語教師のニーズの増加とその要因について見てきました。
最近ではポケトークのような翻訳ツールの精度が向上し、もしかすると語学を学ぶ人も少なくなるのではと考えている人も少なくないと思います。
しかし、自ら言葉を学び、実際に自分の口で相手にその言語を話し、それが通じたときの喜びは何物にも代えられません。
逆も同じで、相手が自分の母語を一生懸命話してくれている姿に、私たちは時折感動します。
語学を学ぶこと、それを伝えることで、こういった感動を味わえることが出来る限り、私は語学学習は続いていくと思います。
そして、そういった瞬間に立ち会える日本語教師という仕事ってすばらしい職業だなぁと思うのです。