日本語教育

【日本語が不自由な外国籍児童が4万人】いま日本の学校で起こっている危機

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この記事は、以下のような悩み・疑問を解決します。

  • いま日本の学校で日本語教育が必要とされているって本当?
  • 日本の学校で学ぶ外国籍児童の状況について知りたい
  • 国内における日本語教育の課題を知りたい

いま日本の学校では、日本語教育の必要性が叫ばれているのを知っていますか?

その理由は、外国籍の子ども、または外国にルーツがある子どもが増えているからです。

そして彼らの多くは日本語に難があるために、学校での勉強についていけないなど、多くの問題が生じています。

この記事では、

  • 日本語指導が必要な児童の現状と背景
  • 日本の学校現場でどのような問題が起こっているのか
  • 今後の学校現場における日本語教育のあり方

についてお話していきます。

日本語の指導が必要な子どもは増加傾向

はじめに、日本語の指導が必要な子どもの現状についてお話しします。

2018年に5万人を突破

文部科学省の2018年の調査によると、日本語の指導を必要とする生徒(小・中・高)は51,126人で、初めて5万人を突破しました。

(出典:文部科学省

その内訳を見ると、外国籍の子どもが40,755人に対して、日本国籍の子どもも10,371人いることが分かります。

ちなみに、ここで言う「日本語の指導が必要」というのは、

  • 日本語で日常会話が十分にできない
  • 日常会話はできるが学習に必要なレベルではない

ような子どもを指します。

「日本国籍」≠「母語が日本語」

上のデータによると、「日本国籍」でも日本語指導が必要な子どもが1万人以上いました。

ここで注意して欲しいのは、日本国籍でも日本語が母語ではない子どもがいるということです。

  • 母語→生まれてから最初に学ぶ言語
  • 母国語→国籍を持つ国の公用語

例えば、両親またはそのどちらかが外国籍の場合、長年海外で生活をして日本に帰ってきた過程などは、これに該当するケースがあります。

半分は母語がポルトガル語、中国語

これらの児童生徒が母語とする言語の種類は、以下の通りです。

(参照:文部科学省

日本語指導が必要な「外国籍」の児童生徒の母語で一番多いのがポルトガル語です。

ちなみに、日本語指導が必要な「日本国籍」の児童生徒で一番多いのは、フィリピノ語でした(約3割)。

日本語が話せない子どもが増加した背景

日本語の指導が必要な児童・生徒が増加している背景には、次のような事情があります。

外国人労働者の増加

日本で働く外国人の数は年々増えています。

2019年の外務省の調査によると、在留外国人の数は280万人以上でした。

また、大学の留学生受け入れ拡大や、技能実習生やEPA等の日本で外国人が働くことができる制度の拡充などが推進されており、次々と外国人が日本に定住しやすくなる制度がつくられてきました。

これによって、多くの外国人が日本に定住し、子どもを育てるようになりました。

2019年には入管法の改正が行われ、外国人が在留資格を取得しやすくなったため、今後ますます増えていくことでしょう。

家庭内の使用言語が日本語ではない

両親、またはそのどちらかが外国人の場合、家庭内で使用する言語(母語)が日本語でないケースがあります。

この環境で育った子どもは、日本語を十分に習得できておらず、日本の学校での学習に困難を感じることになります。

幼少期を海外で過ごし、日本に移住、または戻ってきた場合も同様です。

日本語の指導を必要とする子どもが直面している課題

それでは、このような日本語の指導が必要な子どもは、どのような課題に直面しているのでしょうか。

生活言語よりも学習言語が問題

まず大きいのが、何といっても学習の問題です。

もちろん普段の日常生活で困難を感じる日本語レベルの子もいますが、多くの子どもはある程度時間をかければ日常生活に困らない程度の日本語は習得できます。

問題は授業や学習です。

授業や教科書で使われる言葉や言い回しは、日常ではあまり使わないものも多く、そういった言葉が理解できていないために、学習についていけないケースが多いようです。

  • 生活言語能力(BICS)
    日常生活で必要とされる言語能力のこと。通常2年ほどで習得可能。
  • 学習言語能力(CALP)
    学校の授業などで必要な言語能力のこと。文脈から意味を理解するのが難しく、習得には5~7年以上必要と言われている。

(日本語教師の試験を受ける人は要チェック!)

中退、進路、不就学の問題

学習の問題は、義務教育を終え、高校に進学した後の様々なデータに顕著に現れています。

日本語の指導が必要な生徒における各項目の割合

  • 高校中退 9.3% (全体は1.3%)
  • 高校卒業後に大学や専門学校へ進学 42.2% (全体は71.1%)
  • 高校卒業後に非正規就職 40% (全体は4.3%)
  • 高校卒業後、就職も進学もしていない 18.2% (全体は6.7%)

(出典:文部科学省

また、このほかにも不就学や不登校の子どもの存在も数多く確認されています。

これらは、家庭環境や経済状態なども影響していると考えられます。

しかし、やはり学習を十分に習得できなかったことが大きく関係していると個人的には思っています。

文化や宗教の違い

続いて、文化や宗教の違いで苦労しているケースもあるようです。

例えば、イスラム教の家庭の場合、食事で食べられないものへの配慮が必要なため、他の子と同じ給食を食べることができなかったり、

宗教上つけているピアスやネックレスなども、校則に違反するといった理由で指導されたりし、その後トラブルに発展するケースが報告されています。

学校内の設備や制度、意識も対応が必要のようです。

生徒よりも保護者との意思疎通が困難な場合も

また、子どもが日本語でコミュニケーションが取れる場合でも、保護者とのコミュニケーションに苦労している学校や先生も多くいます。

重要なお知らせが伝わらなかったり、面談などが上手く進まないなど、学校側の苦労もあるようです。

さらに深刻なのが、子どもと親のコミュニケーションも上手くいかない場合です。

親の日本語が不自由で、子どもは日本で生まれ育ったため、日本語しか話せないという家庭もあるようです。

そのため、家族の深いコミュニケーションができないために、親子関係がうまくいかないといった悩みを抱えている子どももいます。

子どもへの支援のあり方

つぎに、上記の問題を解決するためにどのような対応が行われているか、または必要とされているかについてお話します。

「特別の教育課程」による指導

現在の制度において、日本語の指導が必要な子どもたちに対して、学校は「特別の教育課程」による指導を行うことができます。

特別の教育課程とは

  • 学校生活を送る上や教科等の授業を理解する上で必要な日本語の指導を学校が行うためのカリキュラム
  • 通常の授業の一部の時間を使って、在籍学級以外の教室で指導
  • 挨拶の言葉や実際の場面で使用する日本語の表現、自分の名前を平仮名や片仮名で書く,教室に掲示されている文字を理解できるようにする練習
  • 日本語を学ぶことと教科内容を学ぶことを一つにした「JSLカリキュラム」(JSL:Japanese as a Second Language)をつかって指導
  • 原則、年間10単位時間から280単位時間まで実施可能(必要に応じて延長可)
  • 教員免許を持っている教員なら誰でも指導できる
  • 児童生徒一人ひとりに応じた指導計画と学習評価を行う

(日本語教師の試験を受ける人は要チェック!)

15000人がサポートなし

しかし、現状はこういった特別な指導を受けている生徒は7割程度にとどまっています。

残りの3割、人数にすると15,000人以上の生徒は、サポートを受けることができず、授業の内容が理解できない状態にいます。

文部科学省の調査によると、特別な教育課程による指導ができない理由として学校は、

  • 日本語と教科の統合的指導を行う担当教員がいないため
  • 「特別の教育課程」で行うための教育課程の編成が困難であるため
  • 個別の指導計画の策定や学習評価が困難なため
  • 該当する児童生徒本人、または、保護者が希望しないため
  • 校内に「特別の教育課程」の対象児童生徒がいないと判断するため

などの理由を挙げています。

この問題の解決には、指導ができる教員を育成するための研修制度拡充、日本語の専門家やソーシャルワーカーなどの外部人材の活用などが求められます。

したがって、国内の学校教育現場への日本語教師のニーズも今後高まっていくことになるでしょう。

参考までに、文部科学省が提供している外国人児童のためのサービスを紹介します。(日本語教師の試験を受ける人は要チェック!)

  • JSLカリキュラム
    外国にルーツがある児童生徒向けの日本語と教科が同時に学べるカリキュラム。小学校編と中学校編がある。
  • CLARINET(クラリネット)
    海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育に関する情報提供ページ
  • かすたねっと
    外国にルーツのある児童・生徒の学習を支援する情報検索サイト。多言語に対応した教材がダウンロードできるなど、教員も学習者も利用できる機能がたくさんある。
  • つながるひろがる にほんごでのくらし
    児童生徒に限らず、日本で生活する外国人日本語の学習経験が乏しい人向けの学習サイト

地域の受け入れ体制の必要性

学校だけでなく、地域の受け入れ体制の拡充も必要です。

地域で日本語教育を受けれる日本語教室のような機会をつくるだけでなく、逆に地域住民が異文化を学び触れ合う機会をつくることも大切です。

こういった整備は、市民だけでなく行政も一緒になって行っていく必要があるでしょう。

外国人留学生や労働者がたくさんいる市町村でも、役場に行くと書類は日本語のものしかなく、通訳もいないようなところがあります。

誰もが気持ちよく暮らすことの出来る地域をつくるためには、制度面のアップデートだけでなく、私たち市民の考え方もアップデートしなければならないようです。

さいごに

いかがだったでしょうか?

今回は、日本語の指導が必要な児童生徒についてお話しました。

教育を十分に受けられない子どもの問題は、もはや開発途上国だけではなく、日本にも存在する問題です。

教育を受ける権利は、絶対に保証されるべき人権の一つです。

それがマイノリティだからといって無視されてはいけません。

日本語教師は今後、日本の学校現場に欠かせない仕事になるかもしれません。

実際、つい先日「日本語教育の推進に関する法律」が閣議決定され、2020年6月28日に施行されました。

この中で、日本語の指導が必要な児童生徒への対応の強化など、日本語教育の施策のさらなる推進が決まりました。

今後も、日本語教育の動向に注目していき、みなさんにこのブログでお伝えしていきます。

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板垣 暁歩

国際協力NGOルマナイサモア所属
サモアを愛する国際協力師
2020年7月よりサモアで算数・数学教育の新たなプロジェクトをスタート予定。「教育で人と世界をつなぐ」をモットーにサモアと日本の学校をつなぐプロジェクト進行中。ライターとして教育・国際協力の記事も執筆。

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