日本語教育

【合格率は11.1%】外国人看護師を育成するEPA制度とその問題点

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この記事では、次のような悩み・疑問を解決します。

  • 日本で働く外国人看護師や介護福祉士について知りたい
  • 日本語教師の試験に頻出の「EPA制度」を解説してほしい
  • EPA制度の現状や問題点について知りたい

みなさんは、日本の医療現場や介護現場で働く外国人を見たことがありますか?

実は彼らはEPAという協定によって日本に来ています。

このEPAという制度、日本語教師を目指している人にとっては、試験に頻出の分野です。

また、日本語教師を目指していない人にとっても、将来外国人の看護師や介護士にお世話になることは十分にあり得るでしょう。そんな時、彼らがどのようにして日本で働くことができるのかを知っておくことは大切です。

この記事では、

  • EPAとは何か
  • 外国人が日本の看護師や介護士になるまでのプロセス
  • EPAの問題点

について解説していきます。

日本の外国人労働者についてもっと知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

EPAとは経済連携協定のこと

EPAとはEconomic Partnership Agreementの略で、経済連携協定とも呼びます。

EPAとは

EPAは、日本と相手国の二国間で結ぶ協定で、貿易の関税撤廃や投資の規制撤廃のほか、様々な分野における協力や、人的交流を行い、お互いの経済をより活発にしていくためのものです。

EPAの歴史と現状

EPAは2002年にシンガポールとの間に結ばれたのをきっかけに、現在までに21の国・地域との間で18の協定が結ばれています(2020年2月現在)。

協定を結んだ国との貿易は、日本の貿易総額の51.6%にものぼり、現在交渉している協定も含めると、86.2%にもなる計算になります(外務省より)。

人的交流としての看護師・介護福祉士の受け入れ

特に、インドネシア(2008年~)、フィリピン(2009年~)、ベトナム(2014年~)との間で結ばれたEPAにおいて、人的交流の一環として看護師・介護福祉士候補者の受入れが始まりました。(※試験出るよ!)

このプログラムは、日本で看護師・介護福祉士の国家資格を取得することを目的に、協定で認められる期間日本に滞在し(看護3年間、介護4年間)、就労・研修するものです。

また、この候補者を国内で受け入れる唯一の機関である国際厚生事業団(JICWELS)※試験に出る!)によると、

この受入れは、日本とインドネシア、フィリピン、ベトナム各国との経済連携の強化のために行うものであり、単に労働者を雇用するためのものではありません。

2021年度版 EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者受け入れ パンフレット

とあり、あくまで相手国からの強い要望があったようです。しかし、同時に次のようにも記されています。

EPA に基づき来日する候補者は、日本の国家資格を取得し、看護・介護の専門職と
して活躍することに加えて、他の外国人職員に対する助言や指導を行うことが期待されております。

2021年度版 EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者受け入れ パンフレット

つまりこの背景には、相手国の雇用機会の不足や国民の所得の低さ、医療福祉分野における専門性や知識・技術の不足という問題と

日本の少子高齢化による労働力不足という問題があり、

EPAはこれらの解決策の一つとなるという点で、両者にメリットがある制度と言っていいでしょう。

以下で、このプログラムについて詳しく解説していきます。

国家資格取得を目指すプログラム

では、実際に候補者たちはどのような資格があれば応募でき、どのような研修を行い、資格取得を目指すのでしょうか。

受け入れから研修、資格取得までのプロセス

まずこのプログラムに応募できる条件は以下の通りです。(※試験出るよ!)

看護師の応募条件
  • 自国での看護師資格を取得している
  • 看護師としての実務経験が2年以上(フィリピンは3年)
  • 研修後に日本語能力試験N4程度の語学力(ベトナムは研修前にN3以上)
介護福祉士の応募条件
  • 自国で看護学校や大学の看護学部を卒業している
  • 研修後に日本語能力試験N4程度の語学力(ベトナムは研修前にN3以上)

合格後は以下のようなプロセスで資格取得を目指します。

EPA看護師・介護福祉士になるまでのプロセス

(※ただし、国によって若干の違いあり)

なお、候補生は日本へは「特定活動」という在留資格で入国することになります。(試験頻出!

国家試験を受けられるチャンスの数に差が

看護師と介護福祉士のプロセスは以上の通りですが、日本に滞在できる期間は看護が3年、介護4年と異なります。

さらに、滞在期間中に国家試験を受けることができる回数にも差があります。

看護師は3回受験できる(つまり滞在期間中は毎年受験可能)のに対し、介護福祉士は最終年の1回しか受験が認められていません。(試験頻出!)

しかし、2019年2月に日本政府は、最後の国家試験で不合格になった者について、一定の条件に該当した場合に追加で1年間の滞在期間延長を認める(テスト出るよ!)方針を発表しました。

これにより、日本滞在期間中に国家試験を受験する機会が増えることから、今後合格者の増加が期待されます。

日本語教師とEPA

日本語教師としてEPAに関わる方法があります。

上のプロセスにもあるように、候補生はまずは現地で日本語研修を受けることになります。

この研修において、これから日本で研修を受ける候補生に日本語を教える日本語教師として働くことができます。

 EPA(経済連携協定)日本語予備教育事業

経済連携協定(EPA)に基づき来日を希望するインドネシア人・フィリピン人・ベトナム人看護師・介護福祉士候補者を対象に、現地で約6ヶ月間(ベトナムは1年間)実施する初級から中級程度の日本語教育事業。

インドネシアとフィリピンは国際交流基金が、ベトナムはアークアカデミーが毎年募集を行っています。

EPA(経済連携協定)日本語予備教育事業についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

EPAという制度が抱える問題点

EPAによる看護師・介護福祉士の受入れが始まってから10年以上経ち、様々な問題点も浮き彫りになってきています。

合格率11%という狭き門

今年2020年2月に実施された第109回看護師国家試験のEPA候補生の合格率は、

たったの11.1%(受験者413人に対して合格は46人)

ちなみに、日本人も含めた全体の合格率は89.2%という結果からも分かるようにかなり低いです。

一方、介護福祉士の2020年1月~3月に実施された国家試験の合格率は44.5%でした。

こちらも決して高い数字とは言えませんが、日本人も含めた全体の合格率が69.9%であることを考えると健闘している方でしょうか。

この看護師試験の合格率の低さの一番の要因はやはり「語学」でしょう。

日本人が受ける試験と同じものをEPA候補生も受験するため、母語ではない試験でなおかつ、専門用語の多い看護師試験は、彼らにとってかなり難易度が高いことは容易に想像ができます。

ただ、EPA候補者の受験に対しては以下のような配慮も行われております(試験出るぞー!

  • 試験時間の延長(看護は1.3倍、介護は1.5倍)
  • 全ての漢字に「ふりがな」を付けた問題用紙を配布
  • 疾病名等への英語併記(介護のみ)

とくに看護は人の命に関わるような仕事のため、なかなか条件を緩和することは難しいと思いますが、それでも毎年9割近くの人たちが仕事を得られずに母国へ帰国していく状態は、制度として決して健全とは言えないのではないでしょうか。

日本文化という価値観の押し付け

また、日本における研修の内容についても問題として挙げられています。

日本文化という名目で、相手の国の文化や人としての尊厳を無視して、日本式の礼儀や作法を覚えさせ、半強制的に順応を求めている側面があります。

ある記事によると、以下のような例も報告されています。

ベトナムのある送り出し機関の研修所では、元留学生や元技能実習生たちが来日予定のベトナム人に対して、日本の製造業で使われてきた生産管理の手法である5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)を徹底的に叩き込んでいた。(中略)日本人の好みに合うように「疲れていてもびしっと緊張感を持つ」あるいは「常に生き生きとした表情で、笑顔で返事をする」ことを教えており、謝る場合にも真剣な顔で深く頭を下げ「すみませんでした。今度から気をつけます」と言わせている、という。このベトナム人教員によれば5Sは一日に何度も唱和し、その実践を怠ればトイレ掃除一週間や校庭100週などの罰則が待っている。植民地時代の身体管理を髣髴とさせる研修は、イノベーションが重視される時代にあまりにも時代錯誤に思われたが、これは日本の雇用主の要望なのである。

https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section4/2018/05/epa.html

結局は、日本の雇用主やそのサービスを受ける患者、介護を必要とする人、またその家族など、相手の文化を容認したり多様性を認める感覚が、日本社会にはまだまだ足りないということなのではないでしょうか。

労働力の搾取

さらには、本来のEPAの目的である人材交流・技術移転といった側面が無視され、ただの労働力の搾取になっているという問題もあります。

実際に、残業代未払い、労災隠し、パワハラ、強制帰国、研修を行わないなどのケースが発生しています。

研修体制も施設によって異なり、4年間マンパワーとしていてくれれば良いと、研修を行わずに「使い捨て」にするような介護施設もあるようです。

ある施設では、もうEPAなしでは施設運営が成り立たないというところもあり、介護職に占めるEPA介護士の割合が1/3から半数近いというところもあり、本来のEPAの制度や目的が認知されていない点が指摘されています。

さいごに

いかがだったでしょうか?

今回は、EPA(経済連携協定)における外国人看護師・介護福祉士の研修制度についてお話しました。

日本はこれからますます外国人労働者が増加していくことになるでしょう。

一見すると私たちの暮らしを助けてくれるありがたい存在の外国人労働者ですが、もし彼らが不利益を被っていたり不当な扱いを受けているとしたら、そのままでいいのでしょうか?

グローバル化が進む現代において、様々な国との持ちつ持たれつの依存関係を保ったまま、私たちは生きていく必要があります。

その中で、本当にお互いにとって持続可能な制度にしていき、同時に私たちのマインドも多様性を受け入れるような感覚を身につけていかなければならないのではないでしょうか?

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板垣 暁歩

国際協力NGOルマナイサモア所属
サモアを愛する国際協力師
2020年7月よりサモアで算数・数学教育の新たなプロジェクトをスタート予定。「教育で人と世界をつなぐ」をモットーにサモアと日本の学校をつなぐプロジェクト進行中。ライターとして教育・国際協力の記事も執筆。

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