国際協力

「エシカル消費」とは |意味、具体例、フェアトレードとの違いなどを解説

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この記事は、次のような悩みや疑問を解決します。

  • エシカル消費がどういうものか知りたい
  • エシカル消費って、具体的に何をすればいいか分からない
  • 身近なことから国際協力をしてみたい

みなさんは買い物をするとき、何を一番重視していますか?

「安さ」「質の良さ」「コスパ」など、様々な自分の価値観を基準に毎日の買い物を行っていると思います。

実は私も「特価商品」や「期間限定」と言った言葉についつい胸が躍ってしまう一人ですが、

その「安さ」や「コスパ」が、誰かの幸せを奪っているとしたらどう思いますか?

たしかに自分や家族が生活していくためには、より安いものを買わなければという思いも分かります。ただ、自分たちだけ良ければいいのでしょうか?

今回、紹介する「エシカル消費」は、自分の買い物のチョイスでほんの少しだけ「遠くの顔も知らない誰かを笑顔にする」方法です。

この記事では、

  • エシカル消費の意味
  • エシカル消費の具体例
  • 「エシカル消費」を条例にした徳島県の取り組み

について解説していきます。

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エシカル消費とは

エシカルは英語のethicalから来ています。

エシカル ethical
【形容詞】倫理的な、道徳的に正しい

ここから考えると、エシカル消費は「法律で決まってるわけではないけど、こうした方が公平で正しいとみんなが思っていることを基準に消費行動(買い物)をすること」という意味になります。

エシカル消費の意味

では、現在使われている「エシカル消費」という言葉の意味は何なのでしょうか。

一般社団法人エシカル協会によると、エシカル消費という言葉は次のように定義されています。

「地域の活性化や雇用なども含む、人や地球環境、社会に配慮した消費やサービス」のことを「エシカル消費」と言います。

エシカル協会

つまり、エシカル消費は「人=生産者や労働者などへの影響」、「環境=大気や森林などへの影響」、「社会=持続可能で誰も取り残さない世界」を考えて消費行動をする(しない)ことを意味します。

エシカル消費の基準

このエシカル消費という考え方は、1980年代にイギリスで始まったと言われています。

1989年にイギリスで初のエシカル消費専門誌として「エシカル・コンシュマー(Ethical Consumer)」が創刊され、今もなおエシカル消費を消費者に広めるための活動を行っています。

そのエシカル・コンシュマー誌が行っている取り組みの一つに、企業や商品を独自に開発したエシカル度「エシスコア Ethiscore」で判定するというものがあり、これまでに5万件以上の企業や商品、サービスを評価してきました。

このエシスコアが、エシカル消費となりうる基準として参考になると思ったので紹介します。

エシスコアの評価基準は、以下の5つのメインカテゴリに分けられています。

  1. 動物
    化粧品の動物実験、家畜の工業的生産への関与、動物虐待など
  2. 環境
    環境被害、原子力発電、気候変動、環境汚染、有害物質排出、生物多様性など
  3. 人権
    人権侵害、搾取工場、労働者権利、下請け企業の労働環境、健康被害、武装勢力支援など
  4. 反社会勢力への支援の有無
    不当な寄付、ボイコット活動の有無、遺伝子操作の有無、反社会的金融への関与など
  5. 持続可能性
    企業姿勢、商品の持続可能性、オーガニック製品、フェアトレード製品など

エシカル・コンシュマー(Ethical Consumer)誌は現在Webページでも活動しており、自分が興味がある商品やサービスを入力すると、エシカル消費をするための基準を表示してくれます。

例えば、「牛乳 milk」と入力すると、以下のようなページが表示されます。

すると、購入するべき商品の基準として「牧草地で飼育されたオーガニック商品」「地元で作られた商品」という2点と、

購入するべきではない基準として「工場で作られた商品」「遺伝子組み換え作物が含まれている」「そもそも毎日牛乳が必要か」という3点が示されます。

なかなか面白かったのでよかったら皆さんも試してみてください。(下のリンクからどうぞ)

Ethical Consumer
Your personal ethical consumer guide. Independent product guides, research, information and analysis since 1989.

エシカル消費とフェアトレードの違い

ところで、エシカル消費と一緒によく耳にする言葉にフェアトレードという言葉がありますが、

簡単に言うと、フェアトレード商品を購入することはエシカル消費行動の一つです。

つまりエシカル消費という大きな枠組みの中に、フェアトレード商品の購入があります。

フェアトレードについては、以下のエシカル消費の具体例でもう少し詳しく紹介します。

今すぐできるエシカル消費の具体例

ここからは、あなたの日常生活の中で今すぐできるエシカル消費の具体的な行動例を紹介します。

どれか一つでも取り入れて、今日からあなたもエシカル消費者になってみませんか?

オーガニック製品の購入

オーガニックとは有機のことで、オーガニック製品とは農薬や化学肥料に頼らず、太陽・水・土地・そこに生物など自然の恵みを生かした農林水産業や加工方法を指します。

最近では農作物だけでなく、化粧品やオーガニックコットンを使った衣服も注目されるようになりました。

オーガニック製品を購入することで、農薬や化学肥料の使用削減に貢献できるため、環境への影響や、生産者の農薬による健康被害を軽減することに繋がります。

また、食べ物の場合は、自分が摂取する農薬などの化学物質を減らすことにもなるため、自分の健康を保つことにもつながります。

フェアトレード商品の購入

フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で購入し、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す仕組みのことです。

私たちが安い商品を購入できている理由の一つには、一番弱い立場の生産者が丹精込めて作ったものを安価で買いたたく仲買人の存在がいて、彼らが搾取している現状があります。

私たちがそれを何も考えずに「安い!ラッキー!」と思って買ってしまうことは、遠くにいる貧しい生産者や労働者をさらに苦しめることになっているわけです。

フェアトレード製品を購入することは、そんな不当な扱いを受けている弱い立場の人たちの生活を守ることに繋がります。

フェアトレード製品の多くには、下のようなフェアトレード認証ラベルがついているので、ぜひ探してみてください。

地産地消

意外かもしれませんが、農作物などの地産地消もエシカル消費の一つと言われています。

フェアトレードと重なりますが、開発途上国の生産者が買いたたかれてしまう原因の一つには、私たち先進国の消費者が安いものを求めるから、弱い立場の人たちが犠牲になるという構造があります。

しかし、私たちが自分の住んでいる地域で生産されたものだけを消費すれば、弱い立場の人を苦しめている外からのニーズそのものがなくなるわけです。

また、輸送には燃料が大量に必要で、それによって発生するCO2などは環境破壊の原因の一つになります。

地産地消することで、CO2の削減などにもつながり、地球にも優しい消費にすることができます。

買わないという選択肢も

最後に、個人的にはこれが一番重要だと思っているのですが、

エシカル消費には、「どう消費するか」だけではなく、「どう消費しないか」も重要な視点の一つだと考えます。

その消費は本当に必要ですか?人の幸せを奪ってまで購入すべきものですか?

そういう問いかけを自分に対してできるようになることがエシカル消費の一歩だと考えます。

世界に先駆けて「エシカル消費条例」を制定した徳島県

日本でもエシカル消費の認識が高まってきているなか、徳島県が世界でもめずらしい「エシカル消費条例」というものを制定しました。

エシカル消費条例とは

2018年10月に徳島県によって「徳島県消費者市民社会の構築に関する条例」(通称エシカル消費条例)が施行されました。

この条例では、エシカル消費を「地域の活性化、雇用なども含む、人、社会及び環境に配慮した思いやりのある消費行動」と定義し、以下の内容を定めました。

(基本理念)
第三条 消費者市民社会の構築は、消費者一人一人の消費行動及び事業者の事業活動が将来にわたり内外の社会、経済及び環境に影響を及ぼしうることが自覚され、公正かつ持続可能な社会の実現が推進されることを旨として、行われなければならない。

2 消費者市民社会の構築は、人権の尊重や地球環境の保全、その他社会問題の解決に配慮した消費行動や事業活動により実現されなければならない。

3 消費者市民社会の構築は、県、消費者及び事業者がそれぞれの役割を果たし、相互に連携・協力して推進されなければならない。

徳島県議会HP

この条例は、消費者だけでなく、県や事業者にもエシカル消費推進の責任があることを明言している点が特徴と言えるでしょう。

徳島県の具体的な取り組み

この条例の理念実現のために、徳島県は様々な取り組みを行っています。その一部を紹介します。

「とくしまエシカル消費推進会議」の設置

地方では初となる消費者・事業者・行政一体となったエシカル消費の推進母体「とくしまエシカル消費推進会議」を設置し、定期的に話し合いを行っています。

さまざまな情報発信

イベントや広報活動によって県民に広くエシカル消費について知ってもらうための情報発信の機会を設けています。

また、最近ではSNS等を利用した情報発信にも力を入れているようです。

「エシカル甲子園」の開催

エシカル甲子園とは、高校生がエシカル消費の学習や推進等の活動に取り組み、その成果や今後の展望等について発表する大会で、2019年から始まりました。

各地区の予選を勝ち抜いた全国12校の代表が、それぞれの取り組みを創意工夫あふれた方法で発表・プレゼンするこの大会は、徳島県と消費者庁が主催として開催されました。

さいごに

いかがだったでしょうか?

今回はエシカル消費について解説しました。

エシカル消費を知ることは、私たち消費者が知らず知らずのうちに、誰かを苦しめている加害者であるということに気づかせてくれます。

人間の過度な消費行動に依存しなければ持続できない、この社会の仕組み自体がおかしいということにそろそろ気づかなければなりません。

それは簡単なことから始められます。

買い物をするときに、少しだけ自分ではない遠くの誰かを想像するだけです。

ぜひ、あなたの買い物に「エシカル消費」という新たな価値観を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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さもあき

国際協力NGOルマナイサモア所属
サモアを愛する国際協力師
2020年7月よりサモアで算数・数学教育の新たなプロジェクトをスタート予定。「教育で人と世界をつなぐ」をモットーにサモアと日本の学校をつなぐプロジェクト進行中。ライターとして教育・国際協力の記事も執筆。

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