日本語教育

【英語学習者も必見】日本語教育で知っておくべき第二言語習得論7つの仮説

スポンサーリンク

この記事では、次のような悩み・疑問を解決します。

  • 日本語や英語を効率よく学習する方法ってあるの?
  • 日本語教育能力検定試験で出題される第二言語習得研究について知りたい
  • 言語を教える教師として、学習者が効果的に学べる方法を教えて!

みなさんは、これまで自分の母語以外の第二言語を勉強しているときに

「どうしたら効率よく言語を習得できるんだろう?」

と考えたことはありますか?

多くの方は義務教育で英語を学んだときに感じたのではないでしょうか?

実は、この悩みや疑問について「第二言語習得」という分野で専門的に研究している人がいるんです。

この理論を知ることで、あなたの言語学習をさらに効率的・効果的にすることができるかもしれません。

また、日本語教師を目指している方も、この第二言語習得理論を活用し学習者の学びを促進させるために絶対知っておくべき知識です。

この記事では、

  • 第二言語習得研究とは何か
  • 第二言語を習得するために役立つ7つの仮説

についてお話していきます。

日本語教育についてもっと知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。

「やさしい日本語」とは?意味や例文、変換方法まで解説

第二言語習得研究とは

はじめに、第二言語習得研究について簡単に要点を絞って解説します。

母語、第一言語、第二言語とは

まず、母語、第一言語、第二言語など様々な用語について整理します

母語
自分が生まれて最初に身につけた言語のこと。

第一言語
修得した複数の言語の中で優先的に使用する言語。母語と第一言語は同じ意味と考えてよい。

第二言語(外国語)
母語(第一言語)よりも後で学ばれる言語。目標言語、学習言語ともいう。第二言語と外国語も同じ意味と考えてよい

※母国語は、母国(国籍がある国)で最も多く使用されている言語のこと。母語と母国語は違う場合もある。
(例:父が日本人で母が中国人、家庭での会話は中国語だが、国籍は日本の場合、母語:中国語、母国語:日本語)

第二言語習得研究とは

第二言語習得研究とは、「外国語を学ぶときのメカニズム(仕組み)を明らかにする」ことを目指した研究です。

またこの研究の特徴は、言語そのものだけを見て何がやさしくて何が難しいかを考えるのではなく、外国語を学習している「学習者」自身を研究対象としている点です。

よって、学習者がどう第二言語を習得していくかを知ることは、言語を教える側にとっても、言語を学ぶ側にとっても知っておくべき理論であると言えるでしょう。

第二言語習得研究の歴史

第二言語習得が研究され始めたのは1940~50年代ごろなので、非常に新しい研究分野です。

そのため、まだ歴史としては浅いですが、以下で簡単に変遷をまとめます。試験に出るよ!

対照分析研究(1940~50年代)
外国語学習が難しいのは、母語と外国語の違いによる影響が大きいと考え、両言語を比較し、類似点や相違点を明らかにする研究。

誤用分析研究(1960年代後半~70年代)
学習者がどのような間違い・誤用をしているか、その原因と改善するための指導法を研究。誤用は誰にでもあり、それによって言語の習得が進んでいくという考え。

中間言語研究(1970年代初め~80年代)
中間言語とは、外国語を完全に習得するまでの途中でまだ不完全な状態の言語のことで、この中間言語を研究することで学習者の習得過程を解明しようとした研究。

外国語学習に役立つ第二言語習得7つの仮説

ここからは、第二言語習得研究のなかで生まれた7つの仮説を紹介します。

どれも言語習得のためのヒントになり得る考え方ですし、日本語教育能力検定試験を受験予定の人は絶対覚えておきたい仮説をまとめました。

クラッシェンの5つの仮説

まず最初に紹介する5つは、アメリカの言語学者であり、第二言語習得研究の第一人者であるクラッシェンによって発表された仮説です。試験に頻出!

① 習得・学習仮説

習得・学習仮説は、大人が言語を学ぶときの過程として「習得」と「学習」があり、どちらも独立したプロセスであるというものです。

「習得」とは、無意識に起こる学びのプロセスで、自然なコミュニケーションの中で意味を理解しようとすることに集中した結果起こると言われています。

赤ちゃんや子どもの言語を学ぶプロセスも「習得」と言えるでしょう。

一方、「学習」とは、意識的に起こる学びのプロセスであり、単語の意味や文法、構文などを覚えようとして起こるものです。

学校教育で行われている英語の授業などは基本的に「学習」と言えます。

② モニター仮説

この習得・学習仮説を用いて主張したのが、モニター仮説です。

モニター仮説とは、「習得」は第二言語を話せるようになるために重要なプロセスであり、「学習」で得た知識は自分が話した内容が文法的に正しいかチェックする役割(モニター)でしかないという考えです。

これは、「学習」ではなく「習得」のプロセスで勉強しよう、と言っているのではなく、

「学習」だけしても話せるようにはならないし、「習得」だけしても正しい英語が使えるようにはならないということです。

どちらのプロセスも大切で、それぞれが異なる役割をもっているということですね。

日本人はほとんどの人が英語を中学・高校で6年以上学んでいるのに、話すことに自信がない人が多いのは、習得する機会に乏しいからかもしれませんね。

あの有名なス●ードラーニングも、この「習得」のプロセスを重視した教材ですね。

③ 自然順序仮説

自然順序仮説は、第二言語を習得する上で、その言語の構造や文法規則は、自然に習得する順序というものがあり、教わる順序によって変わるものではないという考えです。

クラッシェンの主張する英語の自然な順序は、以下の通りです。

進行形(-ing)、複数形(-s, -es)、be動詞(am, is, are)

助動詞(can, will)、冠詞(The, A, An)

不規則動詞の過去形(go→went, see→saw)

規則動詞の過去形(-ed)、三人称単数の-s、所有格の-s

この順序が正しいかは様々な反論があるようですが、経験的に覚えやすい順序や身に付きやすい順番というものはあるような気がします。

習得する順序を意識して学習することが大切かも知れません。

④ インプット仮説

インプット仮説は、学習者が自分の言語能力よりもやや高いレベル(理解可能なレベル)でインプットを行うことで、第二言語習得が進むという仮説です。

クラッシェンは、自分の現在の言語能力を「i」としたとき、1段階上のレベル「i+1」が含まれているインプットが与えられることが重要で、2段階上の「i+2」のレベルでも効果は薄いと主張します。

また、理解可能なインプットによって文法などは自動で習得されるため、文法学習は話せるようになるという目的にはほとんど意味がなく、アウトプットによる練習も否定しています。

「i+1」という理解可能なインプットだけが第二言語習得につながると主張しています。

⑤ 情意フィルター仮説

情意フィルタ―仮説とは、言語に対する自信や不安などの精神面(情意面)によって、学習する際のインプットの量が変化するという仮説です。

言語学習に前向きで自身がある人は、どんどんと言語に接触していき、そこから学ぶことも多いため、インプット量が増えます。

一方で、消極的で不安が多いと、そもそも言語と接触する機会を自分から遠ざけ、仮にインプットできたとしても吸収できる量が少なくなってしまいます。

このように学習者の心理状況や態度は、言語習得に大きな影響を及ぼすという考え方です。

一言メモ

ちなみに、クラッシェンの5つの理論を実際の教授法にしたものが、ナチュラル・アプローチです。ナチュラル・アプローチは以下のような特徴があります。これもよく出ます!

  1. コミュニケーション(聞く・話す)を重視
  2. 発話を強制しない(徐々にできるようになるのを待つ)
  3. 不安を少なくするために、徐々に段階を踏んでいく
    (例えば、Yes-Noで答える→1つの単語を答える→複数の単語を答える→短い文章で答える→完全な文章で答える)

クラッシェン提唱後に生まれた新たな仮説

クラッシェンが提唱した上の5つの仮説は、第二言語習得研究に大きな影響を与えました。

その後、クラッシェンの仮説をもとにした新たな仮説や、クラッシェンに異議を唱える仮説も現れるようになりました。

ここでは、その代表的な2つの仮説を紹介します。

⑥ ロングのインターアクション仮説

アメリカの言語学者ロングが提唱したインターアクション(インタラクション)仮説について紹介します。試験に出ます!

インターアクション仮説とは、第二言語を用いたインターアクション(相互作用)、つまり相手との直接的なやりとりを行うことで言語習得が促進されるという考え方です。

ロングは、クラッシェンのインプット仮説を支持しつつも、理解可能なインプットをさらに効果的にするためには、相手との意味交渉によるインターアクション(お互いが何を言っているかを理解しようとする行動)が重要だと主張しました。

ここで言う「意味交渉によるインターアクション」とは、以下のような行動が該当します。

  • 相手の発話がよく分からないときに、もう一度分かるように言うよう要求する
  • 相手の言ったことを自分が正しく理解できているか確認する
  • 自分が言ったことを相手が正しく理解できているか確認する

このインターアクションによって、自分と相手の言語能力を差が明らかになり、自分が何を理解していなくて、どう学んでいけばよいかが明確になります。

⑦ スウェインのアウトプット仮説

つぎに、カナダの言語学者であるスウェインが提唱したアウトプット仮説を紹介します。試験出るよ!

アウトプット仮説とは、言語習得のためには自分が理解可能なインプットだけでは不十分であり、相手が理解可能なアウトプットも重要であるという考え方です。

スウェインはクラッシェンが主張するアウトプット不要論(インプット仮説)を否定し、相手に伝えようとする過程で、自分の言語表現を検討することで、自分がいま表現できることと表現できないことのギャップを知ることができ、結果としてインプットへの意識が高くなると説きました。

さいごに

いかがだったでしょうか?

今回は言語学習に役立つ第二言語習得論の7つの仮説について紹介しました。

今日紹介した仮説はあくまで仮説であり、いまも議論が進んでいる最中です。

とくにインプットかアウトプットか、というのは永遠のテーマでもあり、学習をしている人の中でも意見が分かれる部分かと思います。

しかし、ただ闇雲に学習するよりも、こういった理論や仮説を活用し、自分に合った学習法、または自分が納得した方法で学習することが大切だと思います。

第二言語習得論についてもっと知りたい方は、こちらの書籍がおすすめです。

スポンサーリンク
\さもあきをフォローする/
さもあき

国際協力NGOルマナイサモア所属
サモアを愛する国際協力師
2020年7月よりサモアで算数・数学教育の新たなプロジェクトをスタート予定。「教育で人と世界をつなぐ」をモットーにサモアと日本の学校をつなぐプロジェクト進行中。ライターとして教育・国際協力の記事も執筆。

\さもあきをフォローする/
Samoaki Blog