この記事は、次のような疑問・悩みを解決します。
- 日本語能力試験(JLPT)ってどんな試験か知りたい
- 日本語能力試験って難しいの?
- 誰がどんな目的で受けているの?
こんにちは、さもあき(@gakisan2)です。
日本語能力試験(JLPT)は、日本語を母語としない人たちを対象に、日本語の読む力と聞く力を測るための試験です。
私は以前、日本語学習ボランティアとして、このJLPTの合格を目指す外国人の皆さんの学習支援をしていました。
日本に学びに来ている留学生や、仕事や研修生として来ている外国人の多くは、このJLPTの受験経験があり、現在もその合格を目指して頑張っています。
このJLPTを知ることで、彼らがどのような試験を乗り越えて日本に来たか、または現在挑戦し続けているかを知ることができます。
また、日本語教師を目指している方にとって、このJLPTの知識は試験に頻出の内容となっています。
記事の後半で出題のポイントについても解説しているので、ぜひこの記事をきっかけに理解を深めてください。
この記事では、以下について解説します。
- 日本語能力試験(JLPT)の基本情報
- 日本語能力試験(JLPT)の難易度
- 日本語能力試験(JLPT)の目的・メリット
日本語能力試験(JLPT)とは
日本語能力試験(JLPT)は、1984年に国際交流基金と日本国際教育支援協会(旧・日本国際教育協会)が共催で開始した試験です。
JLPTの基本情報
JLPTの基本的な試験情報は以下の通りです。
- 毎年7月と12月の2回実施(2020年度の7月試験は中止)
- 国内47都道府県と海外75の国・地域で実施(2019年実績)
- N1からN5までの5つのレベル(N1が最上級)
- 読解試験と聴解試験から構成
- 日本語を母語としない人であれば誰でも受験可能
- 試験はマークシート方式
- 問題は全て日本語で書かれている
(日本語能力試験JLPT公式HPより)
JLPTの受験者数・合格率
JLPTの受験者数は年々増加しています。
2019年度の日本語能力試験の受験者数は、1,362,167人(国内・海外の合計)でした。
そのうち、日本国内で受験した人が約48万人、海外で受験した人が約88万人と、海外で受験する人が約2/3を占めます。
海外の受験地で最も受験者数が多かったのは中国で、約27万人でした。(次いで韓国、ベトナム、台湾)※受験者の国籍ではなく、あくまで受験地です
また、2019年度第2回試験の合格率は、全体で34.0%でした。(レベル別に見ても概ね30〜40%)
日本語能力試験の難易度と出題内容
次に、日本語能力試験(JLPT)の難易度と出題内容について解説します。
レベル別・難易度の目安
日本語能力試験の公式HPによると、N1〜N5の難易度の目安は次のように表記されています。
レベル | 難易度の目安 |
N1 | 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる |
N2 | 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面 で使われる日本語をある程度理解することができる |
N3 | 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる |
N4 | 基本的な日本語を理解することができる |
N5 | 基本的な日本語をある程度理解することができる |
少し分かりにくいので、具体例を挙げてみましょう。
例えば、コンビニやレストランなど、ある程度業務が限定されており、マニュアルがあるような接客業のアルバイトとして働くためにはN3レベルが必要と言われています。
これが企業や専門職など、より臨機応変に状況に応じた会話を求められるような立場で働くためには、N1、N2レベルが必要となります。
各レベルの合格点
JLPTはどのレベルも読解120点+聴解60点=180点満点となっています。
しかし、合格点については、以下の表のと通り、各レベルによって異なります。
レベル | 合格点 |
N1 | 100 |
N2 | 90 |
N3 | 95 |
N4 | 90 |
N5 | 80 |
出題内容・問題例
上述の通り、JLPTは読解(読み)と聴解(リスニング)の問題が出題されます。
読解では、言語知識(文字・語彙・文法)を問う問題と、読解力(長文などから読み解く力)を問う問題に分かれています。
また、聴解(リスニング)は、話している内容の意味が分かっているかを問う問題や、質問に対して適切な回答を選ぶ問題などが出題されています。
ここで、読解の中でも言語知識を問う問題を見てみましょう。
【N1の読解】
次の言葉の使い方として最も良いものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
いたわる
- 弱い立場の人をいたわるのは大切なことです。
- 山田さんはこれまでの努力をいたわってくれました。
- 母は孫が遊びに来たら、いつもいたわっていました。
- 政治家は国民の生活をいたわるべきです。
(参照:日本語能力試験公式HP)
【N3の読解】
つぎのことばの使い方として最もよいものを、1・2・3・4から一つえらびなさい。
「今ごろ」
- それでは、今ごろテストを始めます。
- 今ごろ東京では桜が咲いているでしょう。
- 今ごろ現金で支払うことが少なくなった。
- 今ごろ雨が降りそうな天気だ。
(参照:日本語能力試験公式HP)
【N5の読解】
の ぶんと だいたい おなじ いみの ぶんが あります。1・2・3・4から いちばん いい ものを ひとつ えらんで ください。
「わたしは デパートに つとめて います。」
- わたしは デパートで かいものを して います。
- わたしは デパートで さんぽを して います。
- わたしは デパートで しごとを して います。
- わたしは デパートで やすんで います。
(参照:日本語能力試験公式HP)
いかがでしょうか?
N1の問題は日本語を母語とする人でもちょっと考える必要がありそうですよね?
また、N1ではルビ(ふりがな)はふられていませんが、N3になると所々ルビがふられたり、平仮名で書かれていたりします。
N5になると、漢字は使われておらず、文節ごとにスペースが空いた、いわゆる「やさしい日本語」の書き方に近い表記になっている事が分かります。
\「やさしい日本語」についてもっと知りたい方はこちらの記事もどうぞ/
日本語能力試験の目的・メリット
続いて、日本語能力試験(JLPT)を受験する人はどのような人で、合格するとどんなメリットがあるのかを解説していきます。
どんな人が受験するのか?
JLPTを受験する人の多くは、将来的に日本に来て、留学生として学ぶ、または仕事をしたいと考えている人たちです。
例えば、以下のような人たちがいます。
- 日本の大学等への留学を希望する人
- 日本で(できるだけ長く)仕事をしたい人
- 日本の国家資格を取りたい人
- 技能実習生として来日したい人
- EPA協定で、日本で看護師・介護士の資格を取りたい人
この他にも、日本の文化が大好きだから、日本語という語学に興味があるからという理由で受験する人もいます。
日本語能力試験を合格するメリット
留学、資格、仕事を目的に来日する人にとっては、JLPTが条件、またはアドバンテージにつながるケースも多々あります。
日本の国立大学に国費留学する場合
海外の人が日本の国立大学に国費で留学する場合、JLPTのN1合格が条件となっています。
つまり、N1を取得することで経済的な援助を国から得ながら日本で学ぶ事ができます。
このケースはかなりエリートコースですが、普通に自費で日本の大学に留学生として入学する場合でも、N2以上の合格が条件になっている大学がほとんどです。
【参考】国立鳴門教育大学の場合、以下の4つのうちいずれかの条件を満たすことが出願資格の一つとなっています。
日本の国籍を有していない者(在留資格(留学)を取得できる者)で,かつ,語学能力について次の1~4の条件のうちいずれか1つを満たしている者
1 「日本語能力試験」N2以上に合格した者
2 「TOEFL Official Score Report(iBT)」60点以上又は「TOEIC Official Score Certificate」720点以上(以下省略)
(鳴門教育大学HPより)
日本の在留資格の優遇を得る場合
日本に在留する外国人に対して、ある一定の条件を満たすことで優遇措置が得られる「高度人材ポイント制度」というものがあります。
この条件の一つに、JLPTのN1合格があります。
得られる優遇措置には、在留期間の延長や親の帯同許可、配偶者の就労許可などがあります。
ただ、これに関しては優遇措置を受けている外国人はまだまだ少ないようです。
日本の国家資格を取得する場合
日本の医師免許や看護師資格、薬剤師、助産師など、いわゆる国家資格と呼ばれる資格を外国人が取得する場合、JLPTのN1合格が必須条件となっています。
EPA協定により来日する場合
日本は、インドネシア、フィリピン、ベトナムとの間で結ばれているEPA協定の一環で、看護師または介護士の実習生の受け入れを行なっています。
この候補者となるためには、JLPTのN4程度(ベトナムについてはN3以上)の日本語能力を身につけている事が条件となっています。
\「EPA」についてもっと知りたい方は、こちらの記事もご覧ください/
【合格率は11.1%】外国人看護師を育成するEPA制度とその問題点
日本語教師を目指す人必見!JLPTの押さえるべきポイント
ここで、日本語教師になるための資格の一つである日本語教育能力検定試験についてお話します。
日本語教育能力検定試験でも、日本語能力試験(JLPT)について問う問題は頻出です。
以下で、よく狙われるポイントをまとめましたので、受験予定の方はチェックしておいてください。
2010年改定での変更点に注目
JLPTは2010年に大きく制度が変更されました。旧試験と現行の試験の変更点について問われることが非常に多いです。
レベルが4段階から5段階へ
旧試験では1級~4級という4段階のレベルを設定していましたが、2010年度以降の新試験では5段階となりました。
特筆すべきは、従来の2級と3級の中間に位置するレベルとしてN3を追加したという点です。
したがって、旧試験と現行の試験のレベルの対応としては以下の表のように表すことができます。
旧試験 | 現 行 |
1級 | N1 |
2級 | N2 |
N3 | |
3級 | N4 |
4級 | N5 |
成績は素点から尺度点へ
素点とは何問正解したかによって点数が決まる、いわゆる学校のテストのような点数の付け方です。
従来はこの素点方式で成績を表示していました。
JLPTは合格点が決まっているため、この素点方式の場合、毎年どうしても微妙に変動してしまう難易度によって点数が左右されてしまいます。
そこで、受験者の全解答パターンに応じて、それに見合った尺度点という点数を与える方式にしたことで、従来のデメリットが解消されました。
課題遂行のためのコミュニケーション能力
新試験では、単に日本語の知識や理解を問うだけに焦点を当てた問題からの脱却を目指しました。
特に、日本語を使って日常で起こり得る問題を解決することができるような、コミュニケーション能力を測るための問題へと変化しました。
他の試験との違いに注目
JLPTとは別に、外国人を対象にして行われる試験は他にもあります。
これらの名称や役割・内容の違いもしっかりと説明できるようにしておきましょう。
以下で、その他の試験について紹介していきます。
- 日本留学試験(EJU)
日本に私費で留学したい外国人を対象に、日本学生支援機構が実施している試験。試験内容は、日本語だけでなく、数学などの学科試験もある。 - BJTビジネス日本語能力テスト
日本で働きたい外国人を対象に、日本語のビジネス・コミュニケーションの力を測る試験。日本漢字能力検定協会が実施。 - OPI(ACTFL-OPI)
アメリカ外国語教育協会(ACTFL)が実施する、面接による口語表現能力試験(会話テスト)。試験官によるインタビューとロールプレイによって評価される。 - JPT日本語能力試験
韓国のYBM/si-saと韓国TOEIC委員会が主催している日本語の試験。TOEICの日本語版のような試験。年間で12回実施されていて、主に韓国で普及している。
さいごに
いかがだったでしょうか?
日本語教室のボランティアなどをしていると、N1やN2の取得を目指している学習者さんなどにも多く出会います。
彼らが勉強している教材などを見ると、日本語を母語としている私たちでも難しいような表現が載っています。
時々、日本語が流暢な外国人が、私たちも使わないような表現をするのは、このJLPTに向けて一生懸命勉強していたからかもしれませんね。
このJLPTを知ることで、日本に来ている外国人の皆さんが難しいといわれる日本語を、どれだけ頑張って学んできたかがよく分かると思います。
ぜひ、街で外国人の方を見かけたら、JLPTを話題にして話しかけてみませんか?